PHCグループのサステナビリティ経営は、環境・社会・ガバナンスの課題にグローバルに取り組むものです。特に環境面では「気候変動への取り組み」「サーキュラーエコノミー社会の推進」「省資源化による環境への配慮」の3つのマテリアリティに重点を置き、グループ全体で取り組みを進めています。
ガバナンス
当社グループの気候変動に関するガバナンス体制は、「サステナビリティ推進体制」に記載のとおりです。
取締役会は、サステナビリティ委員会からの報告(年2回以上)を通じて、GHG排出量の実績及びSBT目標に対する進捗を含む気候変動関連の取り組み状況を管理・監督しています。2026年3月期においては、 2050年ネットゼロ目標を取締役会で承認・決議しました。気候変動に関する取り組みの進捗管理及びリスク・機会の評価は、四半期ごとに開催されるサステナビリティ委員会で審議しています。また、2026年度より新設した環境分科会において、GHG排出削減施策の詳細なモニタリングと推進を行い、その結果をサステナビリティ委員会に報告する体制としています。施策の実行はサステナビリティ部門が主管し、各事業部門のサステナビリティチームと連携して推進しています。
リスク管理
気候変動に関するリスク・機会は、サステナビリティ委員会のもとサステナビリティ部門が3年ごとに実施するシナリオ分析、及び、年次で実施するリスク・機会の棚卸しを通じて識別・評価しています。特定されたリスクのうち、全社的に重要と判断されたものは、サステナビリティ委員会及びリスクマネジメント委員会に報告のうえ、全社リスクマップに統合して管理しています。2026年度から実施するマテリアリティの見直しを踏まえ、気候変動リスクの全社リスク管理への統合や経営戦略との連動の強化を進めていく方針です。なお、主要な気候関連リスクに対応するKPIの進捗は四半期ごとにモニタリングし、環境分科会で確認のうえ、必要に応じて対応策の見直しを行っています。
戦略
当社グループでは、気候変動が事業活動に与える影響を適切に把握し、事業の持続可能性を確保するとともに、持続可能な社会の実現に貢献するため、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づき、シナリオ分析を実施しています。直近の分析は2025年度に実施し、原則3年ごとに見直しを行う方針です。シナリオ分析では、異なる気候変動の進行状況を想定した複数のシナリオを採用し、当社グループ全体のバリューチェーンを対象に、2030年(中期)、2050年(長期)を前提として実施しました。なお、当社グループでは、以下の2つのシナリオを用いて分析を行いました。
| 1.5℃シナリオ |
気温上昇を1.5℃以内に抑えるための厳格な脱炭素政策や技術革新が進展する世界を想定。
- SSP1-1.9:持続可能な発展を基盤とし、産業革命以前から2100年にかけての気温上昇を1.5℃以内に抑えるための気候政策を導入し、2050年にカーボンニュートラルを実現するシナリオ
- NZE(Net Zero Emissions by 2050 Scenario):地球の気温上昇を1.5℃に抑え、エネルギー関連の持続可能な開発目標を達成するためのシナリオ
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| 4℃シナリオ |
気候変動対策が不十分であり、気温上昇が4℃に達する世界を想定。
- SSP5-8.5:化石燃料依存の経済発展を続け、気候政策が導入されず、2100年に気温上昇が4℃以上となるシナリオ
- STEPS(Stated Policies Scenario):2021年までに発表された各国の政策公約に基づき、エネルギー起因の排出量が一部減少するものの、産業由来の排出量が増加し、排出量が現行水準にとどまるシナリオ
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発生時期の定義
- 短期:1~2年(年次の事業計画サイクル)
- 中期:3~5年(中期経営計画の対象期間、SBT Near-Term目標におおむね対応)
- 長期:6年以上(2040年カーボンニュートラル目標、2050年ネットゼロ目標に向けた対応)
財務影響度の定義
- 影響度 大:重要な追加投資を要する可能性がある水準
- 影響度 中:既存の対応策の範囲内で管理可能だが、継続的な注視が必要な水準
- 影響度 小:事業への影響が限定的な水準
| 移行リスク |
発生時期 |
1.5℃ |
4℃ |
対応策 |
政策・ 法規制 |
炭素税による製造コスト増加 |
中期 |
大 |
小 |
SBT目標達成ロードマップの実行(Scope 1+2削減施策の推進、再生可能エネルギー導入、省エネ投資の優先順位付け、拠点別排出量・コスト影響の把握) |
| 脱炭素施策(省エネ製品開発等)への取り組み施策による設備投資コスト増加 |
中期 |
大 |
小 |
| 技術 |
新たな技術を取り入れるためのR&Dコスト/設備投資コスト増 |
中期~ 長期 |
中 |
小 |
LCA(CFP)・製品別GHGデータの把握、省エネ性能の製品開発 |
| 市場 |
脱炭素移行が遅れた際の自社製品の売上減少 |
短期~ 中期 |
中 |
小 |
顧客からのGHG・人権・環境データ要請への対応体制整備、セールス部門との連携強化 |
| 評判 |
気候変動対策が不十分なことによる顧客・投資家からの評判低下 |
短期~ 中期 |
大 |
小 |
開示高度化、SBT認証取得後の進捗管理、外部評価結果を踏まえた改善アクションの継続 |
| 物理リスク |
発生時期 |
1.5℃ |
4℃ |
対応策 |
| 慢性 |
高温日の増加による労働環境の悪化に伴った生産効率低下 |
短期~ 中期 |
小 |
大 |
労働安全衛生対策、空調・作業環境改善、BCP強化 |
| 急性 |
自然災害による工場の生産停止や、サプライチェーン分断に伴う原料調達先変更・コスト増加 |
中期~ 長期 |
中 |
大 |
サプライチェーン管理の強化、BCP強化 |
| 高温下での大規模な感染症発生リスクの高まり等による、発症地点からの原料供給停止や自社工場の稼働停止 |
中期~ 長期 |
小 |
大 |
パンデミック対応を含むBCP強化、在宅・遠隔対応を含む業務継続体制の整備 |
| 機会 |
発生時期 |
1.5℃ |
4℃ |
対応策 |
製品・ サービス |
自社の環境配慮製品への需要増による売上拡大 |
中期~ 長期 |
中 |
小 |
省エネ性能・環境負荷低減を製品価値として整理、顧客向け説明資料への反映、製品別環境データの整備、外部認証の取得 |
| 市場 |
環境対応が評価され、欧州・米国を中心に顧客からの選定機会が増加 |
短期~ 中期 |
中 |
小 |
ESG評価・開示の継続的改善、顧客の環境要件への対応力強化、営業部門との連携による環境価値の訴求 |
資源の 効率性 |
省エネ・廃棄物削減・資源効率改善によりコストが低減 |
短期~ 中期 |
中 |
小 |
拠点別の省エネ活動推進、エネルギーマネジメントの高度化、廃棄物削減施策の推進 |
| 強靭性 |
レジリエンス強化による販売量維持・増加 |
中期~ 長期 |
中 |
中 |
BCP強化、主要拠点・サプライチェーンのリスク評価と対応 |
評判・ 資本市場 |
気候変動対応・ESG開示の高度化により、投資家・顧客からの信頼が向上 |
短期~ 中期 |
中 |
中 |
SBT進捗の継続開示、ESG評価機関への対応強化、投資家エンゲージメントの充実 |
PHCグループはヘルスケア・ライフサイエンス領域の事業を通じて、気候変動に伴う機会は以下の観点から事業成長に寄与する可能性があると認識しています。
- 環境配慮型製品の競争力強化:省エネ性能の高い医療機器・分析機器は、特に環境規制の厳しい欧州市場において顧客の選定基準として重要性が高まっており、製品差別化の要素となっています。
- 操業効率の改善:省エネ投資やエネルギーマネジメントの高度化は、GHG削減と同時にコスト競争力の強化にも寄与します。
当社グループは、気候変動に関するリスクと機会を適切に管理し、中長期的に事業の持続可能性を確保するとともに、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを推進してまいります。2026年度より実施するマテリアリティの見直しを踏まえ、シナリオ分析の前提条件及び財務影響評価の精緻化、気候変動リスクの全社リスク管理への統合、並びに経営戦略との連動の強化を進めていく方針です。また、同年度に新設した環境分科会を通じて、気候関連施策のモニタリングと対応策の実効性向上を図ってまいります。
指標と目標
当社グループは、気候変動への対応として、中長期目標を掲げ、GHG排出量の削減に取り組んでいます。
| 目標年 |
内容 |
| 2030年 |
Scope 1+2排出量を2023年度比42%削減、Scope 3排出量を2023年度比25%削減 |
| 2040年 |
Scope 1+2においてカーボンニュートラルを達成 |
| 2050年 |
Scope 1+2のカーボンニュートラルを維持するとともに、Scope 3でネットゼロを達成 |
2030年目標は、地球温暖化を1.5℃以下に抑えるための科学的根拠に基づいた目標として、2025年6月にSBTi(Science Based Targets initiative)のNear-Term 目標における認定を取得しました。なお、基準年(2023年度)及び2024年度の排出量実績データ(Scope1,2および3)については第三者保証を取得しています。
GHG排出量の実績及び目標に対する進捗は、「マテリアリティKPI・目標値と進捗」に記載のとおりです。なお、2024年度のScope 3排出量は基準年比1.4%の増加となりましたが、これは主に購入した製品・サービス(カテゴリ1)に係る排出量の増加によるものです。排出量の大きいカテゴリを中心に、算定精度の向上とサプライヤーエンゲージメントを段階的に進めてまいります。Scope 3のカテゴリ別内訳を含む詳細データ及び第三者保証声明書については当社ウェブサイトをご参照ください。