「選ばれる会社」であり続けるための道筋とは
- 平嶋 竜一
- PHCホールディングス株式会社
専務執行役員
最高総務責任者(CAO)
最高人事責任者(CHRO)
最高変革責任者(CTO)
1. 個人の成長の総和を、PHCグループの成長へ
私たちの人事戦略の根底には、一つのシンプルな確信があります。それは、「個人の成長の総和が、会社の成長になる」ということです。一人ひとりが学び、挑戦し、成果を出す。その積み重ねが、事業の競争力になり、お客さまへの価値になり、最終的にPHCグループの持続的な成長に繋がる。私はそう考えています。
PHCグループの人的資本戦略の概要【前提条件】経営戦略と人事戦略の同期
だからこそ、人を「コスト」として管理するのではなく、「価値創造の主体」として育てる。この考え方が、私たちの全ての人事施策の基本です。従業員が成長し、やりがいを持って力を発揮できなければ、お客さまや社会、株主の皆さまに対する価値提供も、持続的なものにはなりません。人事戦略は、経営戦略の「支援機能」にとどまるものではなく、企業価値創造の中核を担うものです。人的資本戦略を経営戦略と同期させ、事業の方向性と人財・組織のあり方を一体で考えていく必要があります。
PHCグループには、診断領域の技術者、ライフサイエンスの研究者、グローバルに活躍するマネージャー、異業種から転じてきたキャリア採用者、高い成長意欲を持つ新卒者など、多様な人財がいます。私たちが取り組むべきは、「多様な個人が、PHCグループで最大限に成長できているか」という課題です。ポテンシャルは、ただ存在しているだけでは会社の力にはなりません。従業員が正しく育てられ、正当に評価され、やりがいを感じられる環境があって初めて、事業を動かす力に変わります。
この課題に向き合い、必要な人財要件や足らざる資本を見極めながら、一人ひとりの成長を会社の成長に繋げる環境をつくること。それが、CHROとしての私の責任だと考えています。
2. 必要な人財要件を見極め、次の成長に繋げる
PHCグループは現在、「中期経営計画2027」の実現に向けて、「収益基盤強化のための構造改革」「事業ポートフォリオ管理強化」「診断・ライフサイエンス領域への注力」という3つの重点施策に取り組んでいます。これらの取り組みを実行するのは、最終的には人です。経営戦略をどれだけ精緻に描いても、それを担う人財の質と量、組織としての実行力が伴わなければ、成果には繋がりません。
「中期経営計画2027」の実現、そしてその先の成長を見据えると、診断・ライフサイエンス領域で新たな価値を生み出す専門人財、IT・AIを活用して事業や業務を変革できる人財、そして変化の中で組織を率いるマネジメントやリーダーシップ経験を持つ人財を、さらに厚くしていく必要があります。
そのために採用やM&Aによって必要な人財・スキルを外部から調達する、あるいは個別の専門スキルを高めることは重要です。しかし私が特に強化すべきだと考えているのは、今いる人財、今ある資産、今ある技術を活かして、次の成長をつくるマインドセットです。従業員が、PHCグループの中でどのような経験を積み、どのような力を伸ばし、どのような挑戦に向かえるのか。その可能性を会社として見えるようにし、成長領域で求められる人財要件と結びつけていくことも、人的資本戦略の重要な役割です。
PHCグループは、日本発のグローバルヘルスケア企業として、これまで培ってきた技術を使い、どのような新しい製品を生み出せるのか。それによって、どのように世の中のお役に立てるのか。患者さんや研究者の皆さまに、どのような価値を届けられるのか。そうした議論を、より深めていく必要があります。
会社の成長は、一部の人だけがどこかで考えるものではありません。一人ひとりの成長の総和であり、組織全体で取り組む総力戦です。従業員が持つ経験や技術、現場で培ってきた知見を、新たな価値創造にどう繋げていくか。その視点を持てる人財と組織を育てていくことが、「中期経営計画2027」の実現と、その先の持続的な成長に繋がると考えています。
3. 働きやすさとやりがいを掛け合わせ、
エンゲージメントの高い組織へ
こうした人的資本戦略を実行していくうえで、私たちが重視しているのが、「働きやすさ」と「やりがい」の両面を高めることです。最終的に目指すのは、従業員が他社でも活躍できる高い能力を持ちながら、PHCグループで働くことに誇りとやりがいを感じ、自らの意思で当社グループを選び続ける状態です。そのためには、従業員が「ここで働くことが自分の成長になる」と実感できる環境と機会を、会社が継続的につくり続ける必要があります。
働きやすさは、従業員が安心して力を発揮するための土台です。公正な評価、柔軟な働き方、安心して意見を言える環境がなければ、人は本来の力を十分に発揮できません。一方で、働きやすいだけでも十分ではありません。挑戦できる仕事、成長の実感、自分がPHCグループの成長に貢献しているという感覚があってこそ、やりがいが生まれます。この「働きやすさ」と「やりがい」を掛け合わせることで、エンゲージメントの高い組織にしていきたいと考えています。
その手応えを測るため、PHCグループでは毎年、グループ全体でエンゲージメントサーベイを実施しています。サーベイは、組織の状況を映す重要な鏡です。2025年度は10,793名を対象に実施し、回答率は87%となりました。当年度からアンケートのスコープを、LSIメディエンス、メディフォードにまで拡大したことで、対象者数は前年比47%増となっています。エンゲージメントスコアは、旧スコープでは68ポイントと前年比1ポイントの改善を記録し、拡大後スコープでは64ポイントとなりました。
特に注目しているのが、「上司への信頼」の推移です。2022年度の67ポイントから、2025年度には78ポイントまで継続的に改善し続けています。これは、グループリーダーシップ研修などを通じて、管理職の行動変容に取り組んできた成果の一つだと考えています。構造改革のような痛みを伴う変化を組織が乗り越えていくためには、上司と部下の間に信頼があることが欠かせません。
一方で、サーベイでは「行動の開始」「意見の自由」「キャリアパス」にさらなる改善の余地があることも見えています。サーベイを実施しても、従業員が「自分たちの声を受けて、会社が何を変えようとしているのか」を実感できなければ、エンゲージメント向上には繋がりません。そのため、CEOによる毎月のグローバル タウンホール・ミーティングや、年90回ほどのラウンドテーブルでのコミュニケーションを継続し、経営の考えを従業員に直接伝えるとともに、従業員の声を受け止め、改善に向けた行動に繋げる取り組みを継続しています。
サーベイの結果を誠実に見つめ、従業員の声を受け止め、対話と環境整備を地道に積み重ねる。その姿勢が、エンゲージメントの持続的な向上に繋がると考えています。
4. 3つの柱で、人財の成長を支える
この将来像を実現するために、私たちは①採用、②人財開発、③報酬・福利厚生の3つの機能領域を軸に人事戦略を展開しています。
① 採用―PHCグループで働く意味を伝え、選ばれる会社へ
採用において、私が強く意識しているのは、「会社が人を選ぶ」という発想だけでは不十分だということです。人は何を基準に会社を選ぶのか。何を見て、何に期待するのか。そこを真剣に考えなければ、優秀な人財に「選ばれる会社」にはなれません。
私は、候補者が会社を選ぶうえで重要な要素として、大きく3つあると考えています。第一に、その会社に入ることで自分が成長できるイメージを持てるかどうか。第二に、その会社が社会の役に立っている、必要とされていると感じられるかどうか。第三に、安心して働き、力を発揮できる環境があるかどうかです。採用活動では、単に条件を提示するだけでなく、PHCグループで働くことの意味や、ここで得られる成長機会を伝えていくことを重視しています。
2026年には、就活支援/採用支援サービスを展開する株式会社ワンキャリアが発表した「ワンキャリア 就活クチコミアワード2026」において、「特別部門 理系学生が選んだランキング」及び、「エリア部門 関東ランキング」にてGOLDを受賞しました。約5万社の中から選出されたことは、学生の皆さんが自らの言葉でPHCグループの魅力を語ってくれていることの表れでもあります。ただし、これはあくまで一つの通過点です。「選ばれる会社」に近づいているという手応えを大切にしながらも、まだまだこれからだと考えています。
新卒採用では、当社グループの主要製造拠点の一つ・松山工場がある四国地方の大学での授業登壇や地域での採用活動を通じて、学生との深い接点づくりを進めています。採用における男女比もほぼ均衡しており、多様な人財が集まる入口としての役割を果たしています。キャリア採用では、2025年よりアルムナイ(OB・OG)専用サイト「PHCキャリアコネクト」を開設しました。一度PHCグループを離れた人財が、再び戻ってくるという選択肢をつくることは、PHCグループという場の価値を改めて評価してもらう機会を提供することでもあります。ただし、採用は入口にすぎません。入社後に成長を実感し、長く働きたいと思える環境をつくることが重要です。そのため、2025年より新卒1~5年目を対象とした研修「New Employees Career Growth Program」を開始し、若手社員のリテンション強化に取り組んでいます。特に3~5年目の離職防止を重点課題と位置づけ、トレーナー研修や管理職へのインプットを組み合わせた施策を進めています。
新卒男女比率

新入社員入社式の様子(日比谷オフィスにて)
成田工場での新卒入社者向け合同導入研修にて
② 人財開発―次世代の経営を担う人財を、今育てる
人財開発において最も力を入れているのが、「PHCアカデミー」です。「PHCアカデミー」は、次世代の経営幹部を育てるための場であり、シニアマネジメント候補(「Potential Successor Candidate」)と次世代層(「Next Generation」)の二層で構成しています。戦略、財務、DX、マーケティングといったFunctional Knowledgeに加え、英語研修や、オーストラリア、シンガポールでの研修などのAction Learningも組み合わせています。
経営や事業を担う人財には、論理的に物事を考える力が必要ですが、それだけでは十分ではありません。 10年後、20年後にどのような価値を生み出すのか。既存の枠組みを超えて、どの方向を目指すのか。そうした将来を構想する力や、発想の幅も求められます。「PHCアカデミー」では、いわゆるMBAで習得するような知識だけではなく、リベラルアーツや学習・啓発イベントへの参加、社外有識者との対話、他社訪問なども取り入れています。左脳で鍛える論理的思考と、右脳で磨く視野の広さを、どちらも育てていきたいと考えています。
| PHCアカデミー 概要 |
対象者 及び実績 |
シニアマネジメント層 (FY24:19名(国内12名・海外7名)) 次世代層(FY25:23名 (国内15名・海外8名)) |
| カリキュラム |
- Functional Knowledge:戦略・財務・DX・HR・マーケ等
- Action Learning:英語研修・オーストラリア、シンガポールでの研修
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育成 哲学 |
- 左脳(MBA・論理的思考)× 右脳(リベラルアーツ)
- 社外有識者(山口周氏等)・オムロン社訪問等の学習・啓発イベント
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| グループリーダーシップ研修 概要 |
対象者 及び実績 |
国内グループ会社の全管理職以上 (FY24:参加人数:620名/ 満足度:92%) (FY25:参加人数:549名/ 満足度:85%) |
| FY24内容 |
- Functional Knowledge:戦略・財務・DX・HR・マーケ等
- Action Learning:英語研修・シンガポール合宿
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| FY25内容 |
- 成長に向けた従業員マインドの統一とエンゲージメント向上を目的としたMVV浸透と組織力向上プログラムで構成
- 部下のモチベーションと自己効力感を高めるマネジメントスキル習得を狙う
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また、管理職を対象としたグループリーダーシップ研修も継続しています。2025年度は国内グループ会社の管理職549名が参加し、部下のモチベーション向上や自己効力感を高めるマネジメントスキルの習得を目指しました。管理職の行動変容は、組織全体のエンゲージメントを高めるうえで非常に重要です。加えて、全従業員に向けては、Udemy Businessや語学学習、専門研修を組み合わせたLearning Ecosystemを整備しています。その他、グローバルなプログラムとして、アセンシア主催の「グローバル ラーニング デー」があります。全従業員を対象にグループ横断型の学びの場として定期的に開催しているラーニングプログラムであり、当社グループのメンバーが講師を務め、PHCグループの事業や製品への理解促進、リーダーシップスキル、デジタルスキルの向上など、毎年40以上に及ぶセッションを展開しています。
また、アセンシアのポーランド拠点は、2026年、Great Place to Work®社(優れた職場文化を持つ企業を認定するグローバル組織)によって毎年発表される「ポーランドの働きがいのある会社(Best Workplaces™ Poland)2026」に、14位として選出されました。対象となる200社のうち、上位25社のトップランク企業のみが認定される賞です。
このように、一人ひとりが自律的に学び続ける文化をつくることが、組織全体の成長に繋がるだけでなく、従業員の働きやすさとやりがい、そしてエンゲージメントの向上に繋がると信じています。
③ 報酬・福利厚生―努力が正当に報われる仕組みをつくる
報酬・福利厚生については、「選ばれ続ける会社」であるための重要な要素だと捉えています。PHCグループでは、年功ではなく、現在担っている役割と責任を基準とする役割等級制度を採用しています。チャレンジによって職群を変え、より大きな役割を担うことで処遇も変わる。個人の成長が報酬に結びつく仕組みを整えることは、従業員の挑戦を後押しするためにも重要です。
2026年度には、PHCホールディングスの管理職を対象に、他社ベンチマークを踏まえ報酬レンジの上限を引き上げました。これによってすぐに全員の報酬が上がるわけではありませんが、優秀な人財に対して市場競争力のある報酬を提供できる体制を整えることは、「選ばれ続ける会社」であるための必要条件です。また、従業員持株会やLTI(Long Term Incentive)プランとしてのRSU(事後交付型株式報酬制度(リストリクテッド・ストック・ユニット制度))・PSU(事後交付型業績連動型株式報酬制度(パフォーマンス・シェア・ユニット制度))の導入など、従業員が会社の成長を自らの成長や成果と同期できる仕組みも整えています。
働きやすさの面では、オフィス環境の改善にも取り組んできました。フリーアドレスを基本とした働き方へ切り替え、部署を越えた偶発的なコミュニケーションが生まれやすいオフィス環境を整備しています。こうした環境整備も、一人ひとりが力を発揮し、部門を越えて対話しながら新たな価値を生み出すための重要な取り組みです。
5. データと対話で、人財の成長を支える
採用、人財開発、報酬・福利厚生の3つの柱を支える基盤が、HRIS & People Analyticsです。PHCグループでは、グローバルHRプラットフォーム(Workday)を導入し、各子会社にも順次展開しています。これは、従業員が入社してから退職するまでを支えるグループ共通のプラットフォームです。
私たちが目指しているのは、経験や勘だけに依存する人事ではなく、データと対話に基づく人事です。従業員のスキル、経験、キャリア志向を可視化することで、配置や育成、キャリア形成を考える際の共通言語を持つことができます。
もちろん、データだけで人を判断するわけではありません。可視化された情報をもとに、本人や上司、事業側との対話を深め、より適切な成長機会を提供していくことが重要です。HRIS & People Analyticsを通じて、人事の透明性と公平性を高め、一人ひとりの成長を支える基盤を整えていきます。
キャリアパスの見えにくさも、「選ばれ続ける会社」に向けた重要な課題です。PHCグループはM&Aを通じて多様な事業が集まっている一方で、各事業がサイロ化・フラグメント化しやすい面もあります。自分の所属する事業だけではなく、グループ内にどのような事業があり、どのような仕事や成長機会があるのかを、従業員同士がお互いにより分かりやすく知ることができる仕組みをつくっていく必要があります。従業員のスキルや経験、キャリア志向を可視化し、グループ内の成長機会と結びつけていくことは、そのための重要な基盤になります。
6. 多様性と同質性を、価値創造の力に
PHCグループは、M&Aを通じて事業領域を広げ、現在では125以上の国と地域で事業を展開しています。その意味で、私たちはすでに多様な組織です。異なる事業、地域、文化、専門性、キャリアを持つ人財が集まっていることそのものが、PHCグループにとって重要な経営資源です。
成長戦略に照らして考えると、イノベーションの源泉は多様性にあります。同じバックグラウンド、同じ経験、同じ考え方を持つ人だけで議論していても、新しいものは生まれにくい。異なる専門性や価値観を持つ人財が協働し、互いの視点を持ち寄ることで、新しい製品やサービス、新規市場の開拓に繋がる発想が生まれます。PHCグループの価値観の一つである「個の尊重と共創」は、PHCグループが持続的に成長し、企業価値を高めていくために必要な経営テーマです。
一方で、私たちは多様性だけを一面的に強調すればよいとは考えていません。PHCグループは日本発のグローバルヘルスケア企業として、高品質かつ精緻なモノづくりを通じてお客さまに価値を届けてまいりました。高品質な製品を安定的に生み出すためには、品質に対する共通の姿勢や価値観、規律も欠かせません。当社グループの高位平準化されたモノづくりは、同質性から繋がる強みです。多様性と同質性のどちらか一方が優れているという話ではなく、両方の強みをどう生かすかが重要です。
多様な人財が、それぞれの経験や専門性を持ち寄る。一方で、グローバルヘルスケア企業としての品質へのこだわりや、お客さま・患者さん・研究者の方々に貢献するという共通の価値観を持つ。その両方が掛け合わさることで、PHCグループらしい価値創造が生まれると考えています。
7. 一人ひとりの成長と挑戦が、PHCグループの大きな力に
ここまで述べてきた人的資本戦略を、単なる理念で終わらせず、具体的な人事施策と組織文化に落とし込んでいくことが、CHROとしての私の役割です。採用、人財開発、報酬・福利厚生、HRIS & People Analytics、エンゲージメント向上。これらの取り組みを一つひとつ積み重ねながら、従業員がPHCグループで働くことに誇りとやりがいを感じ、自らの意思で選び続ける会社をつくっていきます。
そのためには、会社が従業員に対して本気で向き合う必要があります。「ここで働くことが自分の成長になる」と思ってもらえる環境と機会を、継続的につくり続けること。個人の努力が成果と評価に結びつき、挑戦が次の機会に繋がる仕組みを整えること。従業員が自らのキャリアを主体的に考え、会社がそれに対して適切な成長機会を提示できる状態をつくること。それらの積み重ねが、PHCグループへの誇りや愛着を育て、従業員と会社の間に長期的な信頼関係を築いていくと考えています。
企業には、お客さま、株主、地域社会といった多様なステークホルダーに対する責任があります。しかし、 CHROとして、私は「従業員が一番大切である」と考えています。
もちろん、お客さま満足や株主還元は極めて重要です。しかし、PHCグループで働く一人ひとりがやりがいを感じ、生き生きと活躍できていれば、自ずと質の高い製品・サービスも、持続的な利益も、社会貢献も実現することができると考えています。
多様なステークホルダーの中で、「従業員こそが一番大切である」-この考え方が、企業価値を中長期的に高めていく上での起点であると信じています。
だからこそ、私はPHCグループにおいて、従業員は何を目指してもいいと思っています。課長を目指してもいい。役員を目指してもいい。これまでとは異なる部署での活躍を目指してもいい。もっと言えば、会社の未来を担う立場を目指してもいい。大切なのは、自分は何をしたいのか、どのような価値を生み出したいのかを考え、その実現に向けて行動することです。会社は、その挑戦を支える場でありたいと思っていますし、チャレンジすることを評価する仕組みづくりや賞賛文化の醸成が大事であると感じています。
もちろん、やりたいことをただ自由に言えばよいということではありません。自分の考えを周囲に説明し、必要な準備をし、事業や組織にとっての意味を示すことが求められます。しかし、そうした意思と準備を持って挑戦しようとする人財が増えなければ、組織は次の成長に向かう力を失ってしまいます。従業員がやりたいことに挑戦し、その挑戦が会社の成長に繋がる。私は、それが実現できれば、PHCグループにとって非常に大きな力になると考えています。
PHCグループは、構造改革を進めながら、次の成長に向かっています。その過程では、痛みを伴う変化もあります。しかし、変化を乗り越え、次の成長をつくる力は、組織の中にいる一人ひとりの中にあります。これまでの事業を支えてきた経験、新しい技術への好奇心、社会や医療に貢献したいという思い、自らのキャリアを切り開こうとする意欲。それらをどう引き出し、どう組み合わせ、どう企業価値創造に繋げるかが、人的資本戦略に問われています。
一人ひとりの成長が、PHCグループの成長になる。私はこの考え方を、単なる理念ではなく、組織文化として根付かせていきたいと考えています。一人ひとりの成長と挑戦を、PHCグループの次の成長へ繋げること。それが、CHROとしての私の責任であり、人的資本戦略を通じて実現したい未来です。