目次
2024年度の診療報酬改定、押さえるべきキーワードは?
医療、介護、障害福祉サービスの「トリプル改定」
2024年4月に行われる診療報酬の改定は、医療・介護・障害福祉の「トリプル改定」となります。
通常、診療報酬は2年に一度、介護報酬・障害福祉サービス等報酬は3年に一度改定が行われます。そのため6年ごとに診療報酬、介護報酬および障害福祉サービスなどの同時改定になるとともに、医療計画、介護保険事業計画、医療保険制度の改革など、医療と介護に関わる制度の大きな節目となります。
今回の改定では、地域包括ケアのさらなる推進のための医療・介護・障害のサービスの連携や、同時報酬改定に関する意見交換会が行われました。注目される今回の改定に伴い、薬局においてもシステムや業務の見直しが必要になると想定されます。
出典:「令和6年度診療報酬改定に向けた基本認識、基本的視点、具体的方向性について」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001163187.pdf
「地域医療構想」に向けた改定
超高齢化社会や高齢多死社会に突入していく日本において、今後医療の担い手が減少し、医療を必要とする人口が増加していくことが予想されます。
「2040年問題」と称されるように、一人暮らしの高齢者の増加や介護人材の不足にも備えていかなければなりません。また、今回の改定は2025年に最終年を迎える「地域医療構想」を踏まえた内容となることが予想されます。
国は「患者のための薬局ビジョン」(※1)でも「地域のかかりつけ薬局の推進」を方針として掲げています。集中率の高い門前の基本料は減少傾向にあることからも、ますますかかりつけ薬局推進の動きが加速すると考えられます。
それにともない、処方箋枚数が少ない薬局や中小規模の薬局、医療資源の少ない地域の薬局については、集中率や一部の効率性だけに着目するのではなく、「地域に必要とされる機能」を持続可能な形で提供する配慮が必要となるでしょう。
※1:厚生労働省の専用ウェブサイトを参照
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000102179.html
「人材確保」と「働き方改革」
2023年6月に決定した基本方針では、継続的にサービスを提供するための対応についても検討しています。
昨今の物価の高騰や賃上げはサービスの提供や人材確保に大きな影響を与えており、機動的な対応が必要であるとされています。同時に、医療従事者が健康に働き続けられるよう働き方改革に取り組むことは、患者様に提供する医療の質や安全性を担保することにつながります。人材確保と働き方改革は、今後ますます避けて通れない重要な課題となるでしょう。
2024年から医師の時間外労働の上限規制が適用されることを加味しても、看護師や薬剤師などの他職種に医師業務を一部を任せるタスクシフト・シェアやチーム医療の推進などが重視されます。今まで以上に薬剤師の存在と業務内容が鍵を握ることは間違いありません。
2024年度の診療報酬改定、今後のスケジュールは?

2024年度の診療報酬改定時期は、二ヵ月程度後ろ倒しになる見込みです。薬価改定については4月1日に施行し、薬価改定以外の改定事項については6月1日に施行する方向性で進められています。
診療報酬の改定に向け、窓口負担金の計算対応や初回請求対応、電子カルテとの連携対応など、作業のピークは2〜5月になることが予想されます。
また、2025年の「地域医療構想」に向けては超少子高齢化の医療ニーズに合わせた医療提供体制の構築、地域包括ケアシステムの構築などもポイントになってきます。こうした取り組みはただちに完遂することは難しいものの、質の高い医療が提供される診療報酬体制の在り方も含め、長期的に取り組んでいく必要があります。
診療報酬改定に伴って取り組むべき課題
地域包括ケアシステムの実現
先述した2025年問題や今回の改訂を通して、薬局は「かかりつけ機能」を十分に発揮し、地域医療に貢献するポジションになっていくことが求められます。
また、たとえば新型コロナウィルスのような新興感染症などに対応すべく、抗原検査キットの販売や災害時の対応など、地域に対し「いかに貢献しているか」という視点での評価も必要です。質の高い在宅医療や訪問介護を提供することの重要性も高まり、医療・介護・薬局が専門性を発揮しながらスムーズに連携していくことが求められるでしょう。
患者様が自宅から利用しやすい環境の整備はもちろん、心理的な距離を近付けることも重要になります。よりよい医療を提供し広く集患を行うためには、地域に根づく存在を目指した戦略が必須となっていきます。
医療・介護DXの推進
医療現場においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性が増しています。DXとはデジタル技術を活用し、ビジネスや組織の在り方を変革することによって新たなデジタル時代に適応していく戦略のことです。
医療DXを実現するには、単純にアナログの媒体をデジタルに変更するだけではなく、医療現場と患者様を取り巻くさまざまな環境や情報ごとデジタルに移行していく必要があります。
同時に介護の現場や薬局においてもDXの速やかな導入が求められています。各分野間の連携を達成するためには単に医療DXを追従していくのではなく、足並みをそろえて同時に検討を進めることが望ましいといえます。薬局においても、各機関と連携するためアナログからデジタルへの移行や情報の一元管理・共有のシステムを構築していくことが求められるでしょう。
各種加算見直しへの対策
調剤報酬の改定については、調剤基本料および地域算定加算の見直し、調剤管理料および服薬管理指導料の新設、オンライン服薬指導の見直しについて、今回の改定による影響の調査・検証を行うことになります。
薬剤師業務の「対物から対人中心への転換」を推進するための調剤報酬のありかたについても、引き続き検討されるでしょう。
診療報酬改定に向けて「電子版お薬手帳」をおすすめする理由

今後の薬局経営を考えるにあたり、どのように変化に向き合いテクノロジーを活用していくか、この数年が勝負になるでしょう。各種加算見直しや医療DXの推進、在宅医療の推進などを鑑みて、薬局が優先的に取り組むべきことのひとつに「電子版お薬手帳の導入」があります。
電子版お薬手帳の導入によって複数の医療機関の処方データを一元管理できるようになれば、医療機関と薬局間の連携が進み、より患者様に寄り添ったサポートや利便性の高いサービスを提供することに寄与します。 また、アプリを通して服薬指導が可能になれば、「在宅を含めた地域全体での医療機能」の強化も促進できるでしょう。加えてレセコン連携によって入力作業が効率化されれば、残業時間の削減といった働き方改革にもつながります。
患者様にとっても、お薬手帳の持参や管理が容易になることや、処方箋送信機能を用いた待ち時間の短縮などはメリットが大きく、利便性や満足度に直結するでしょう。また、複数の医療機関を受診しても常に同じ薬局に処方箋を送信するシステムが構築されれば、かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師の実現につながり、広域からの集患やリピート患者様の獲得を実現するとともに、薬局と患者様の双方にとってスムーズかつ安全なサービスの提供が可能となります。
まとめ
2024年におこなわれる診療報酬の改定は6年に一度の大規模な医療・福祉・介護の「トリプル改定」になります。また、翌年の2025年は「地域医療構想」の最終年になります。
薬局や薬剤師は、これまで以上に多様なシーンやニーズへの対応が求められるでしょう。そして地域に根ざした医療・介護提供体制の構築を限りある資源で効率よく活用するためにも、DX化は不可欠であるといえます。
「ヘルスケア手帳」はアプリを通して処方箋を事前送信できるほか、メッセージ機能により患者様へのフォローアップを可能にするなど、薬局と患者様双方にとって効率的な処方をサポートします。2024年度の診療報酬改定に備えるとともに、薬局が直面している課題を解消する一助となることでしょう。
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